「祭壇」と呼ばれるものがある。
一般的には葬儀や仏事、神事において神仏や故人の霊を祀り、供え物を捧げるための台のことを指す言葉が「祭壇」だ。しかしことサブカルチャー層……俗にオタクと呼ばれる人たちの間で「祭壇」という言葉を使う場合は、少々違った意味合いとなることをご存じだろうか。
●「祭壇」という名の推し活

我々オタクの言う「祭壇」とは、簡単に説明すると「自分の好きなアイドルやキャラクターなどを称え、そのグッズなどを飾り付けて楽しむスペース」である。と、言っても私は今まで「祭壇」なるものを設けた経験はない。なので、本記事に掲載している写真は推し活を趣味とする友人R氏に提供してもらったものだ。
R氏こだわりのポイントとして、写真では目立たない小物の類や、食器類も推しキャラクターをイメージしたもので統一し、センスよく飾り付けているという。

友人の場合は「推しの生誕祭」を祝うための「祭壇」建立が主であるが、何も目的はそれだけに限らない。例えば、日常の癒し空間として部屋の片隅に「祭壇」を建立する人もいるし、SNSやブログに掲載し、推しへの愛を主張することが主目的という人もいる。「祭壇」とひとくくりにして呼ばれているが、用途や楽しみ方は人それぞれというわけである。
この場合の正式名称は「生誕祭壇」と呼ぶのが相応しいだろうか。
なるほど確かに、忙しい毎日を健やかに過ごすためには“推し”の1人や2人も必要なのだろう。そんな“推し”が生活空間の片隅で、あなたの毎日を見守ってくれていると思えば、仕事や勉強にも身が入ろうというものである。そう考えると、この「祭壇」という文化は日本に古くから伝わるそれと大差はないようにも思われる。
さもありなん。推しキャラは、信仰や崇拝の対象であり尊い存在でもあるのだ。
ちなみになぜ「祭壇」と呼ぶようになったのかと言うと、その完成形が神聖なものを祀る場所に似ていることや、整然と並べられた配置が儀式的であることに由来する模様。最初に「祭壇」を「祭壇」と呼んだ人は、なかなかどうしてセンスが良いと思う次第だ。
●「祭壇」を建立しよう

さて、この「祭壇」であるが、建立しようと思えば存外に簡単に材料を用意することが可能である。「祭壇」を構成するパーツやアイテム類を材料と呼んで差し支えないかは分からないが、その辺はもう私の知識不足に起因することなので、笑ってご容赦いただきたい。
まず必要となるのが、推しの缶バッジやアクリルスタンド、フィギュア、ぬいぐるみ、ブロマイドやポストカードなどである。
その祭壇が「誰を奉る祭壇」であるかを表すに際して、一等重要なアイテムと言える。
また、「祭壇」にはある一定の秩序が必要となる。もし、秩序を欠いてしまえば、それは単なる“グッズ置き場”へと容易に変容してしまいかねないのだ。
そこで重要となるのが、推しのイメージカラーを用いたリボンや布、また花などで飾り立てるという手法である。もちろん、ただ適当に飾り付ければいいというわけでもない。センス良く……最も簡単な方法は、左右対称となるように飾り付けることだろう。
そうすることで、初心者でも比較的簡単に“秩序”を演出することが可能となるのである。
また、昨今では家具店が販売する専用の「推し活ワゴン」などがある。その名の通り、グッズを飾っておくためのワゴンであり、これを好みでデコレーションすることで「祭壇」へと昇華させることも可能となるだろう。まったく便利な時代になったものである。
●それは信仰か、或いはアートか
「祭壇」とは要するに「推しへの愛を“空間ごと作り上げる”表現」なのだろう。痛バッグが“携帯型の愛”だとすれば、「祭壇」はさしずめ“空間演出型の愛”といったところか。

「祭壇」を建立するという作業は、ある種神聖であり、またアーティスティックな活動であると考える。
となれば、今後時代が進むにつれて「推し祭壇」は、より没入感の強い体験型、実践型の文化として展開していく可能性もあるのではないか。
なお、余談ではあるが日本のように家庭内に仏壇や神棚を設ける文化は世界的にみるとかなり少数派となる。このあたり、日常に“祈り”が融合している日本ならではの文化といえるだろう。
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