暑い時期には、炭酸飲料が飲みたくなる。汗を搔いて、すっかり乾いた身体と心がよく冷えた炭酸飲料を求めるのだ。
子供のころなど、それはもう狂ったように炭酸飲料を飲みまくったものである。甘いジュースが、これ以上ないご馳走であった時代があるのだ。
■クラフトコーラとの出会い
4月19日(土)、この日の福岡はとても暑かった。
博多の辺りなど、建物はビルばかりで、道路はぜんぶアスファルト。太陽の光がさんさんと降り注いだなら、あっという間に街全体が暑くなる。そんな暑い時期には家にこもって涼しい場所で本でも読んで過ごしたいものだが、仕事となればそうも言っていられない。
午前中に、ちょいと博多の辺りでひと仕事を終えて、さて買い出しを済ませて帰ろうか……と、その段階で時刻は既に午後3時。まぁ、一等暑い時間であった。
それなりに歩き回ったせいで、汗も搔いていたし、喉も乾いていたのである。そんな折、博多駅で見かけたのが「オーガニック クラフトコーラ メイキングセット」であった。
写真の方を見ていただければわかるように、まぁ、ぱっと見は“色んな草とか木の実の詰め合わせ”である。
先にも述べたように、私は炭酸飲料が好きだ。一等好きなのは、ウィルキンソンのジンジャーエールなわけだが、コーラも別に嫌いじゃないのだ。
ちょうど「暑いなぁ、炭酸が飲みたいなぁ」と思っていたのだ。
そんな折に「オーガニック クラフトコーラ メイキングセット」なんて面白そうなものを見つけたら、そりゃもう買うしか無いのである。

■クラフトコーラを作ろう
なので、買った。
ちょっと迷ったけど、まぁ、買った。
迷った理由は単純で「今、炭酸が飲みたい」と思っていたからだ。クラフトと言うぐらいなので、すぐには飲めない。一旦、帰宅して“作る”という工程を経ないとクラフトコーラは飲めない。ついでに言うならあんまり調理というものが得意ではないので、上手いこと(旨いこと)コーラをクラフトできるとは限らない。
でも、買った。
帰宅して、とりあえず中身を確認した。
シナモンと、ナツメグ、クローブ、カルダモン、そしてコーラナッツという知らない木の実のセットであった。

シナモンは分かる。写真に写っている木の枝みたいなのがシナモンである。あんなに甘い香りがするのに、齧ってみたら木の皮っぽい味がした。
ナツメグとクローブとカルダモンは、どれがどれか分からない。
名前は知っているが、それだけである。
だが、問題は無いのだ。
どれが何か分からなくても、コーラはクラフトできるのだ。
調理工程は至極簡単なものである。
水200㎖と砂糖200g、メイキングセットのスパイスすべてを鍋に入れて弱火で10分ほど煮出すだけでいいのである。

この際、鍋の中身を混ぜることを忘れてはいけない。
混ぜる手を止めてはいけない。
焦げ付くからだ。
10分間、煮出したら次は粗熱を取って、スパイスを取り除く。
それで完成である。
シナモンや、各種のスパイスをミックスしたような不思議な香りのする液体の完成である。
試しに舐めてみたら甘かった。
1:1で砂糖を煮込んだのだから、甘いのも当然であった。
■飲んでみよう、クラフトコーラ
思えば長い道のりであった。
炭酸飲みたいなぁ、と思ったのが午後の3時頃のこと。
色々あって、コーラのクラフトが完了したのは午後8時を過ぎた頃のことだった。
5時間も経過すると、別にもう炭酸飲料が飲みたいなぁ、という欲求も薄れていたし、何なら昼間ほど暑くも無い。
しかし、コーラを飲む。
完成したので、飲まなきゃ嘘である。
クラフトコーラの溶液に、炭酸水を注ぐだけであった。
5倍ほど希釈するのである。
やっとのことで出来上がったクラフトコーラは、なんだか色が薄かった。
見慣れたコーラの“黒さ”など、そこには微塵も存在しなかった。
もしかして、あの黒ってカラメル着色料とかの黒なんじゃないかな、と思う。
33年生きて来て、初めてコーラの色について疑問を抱いた瞬間であった。
さて、ここまで読んでくれた方々もいい加減、クラフトコーラの味が気になっている頃だろう。
私もそうである。
どんな味がするのかな? と思っている。
結論から言ってしまえば、味は「砂糖」の味であった。
砂糖の味に、シナモンとか、色んな香辛料の香りが付いている感じである。

考えてみれば、水に砂糖とシナモン、それから幾つかの香辛料を入れて煮詰めたものなので、そんな味がするのも当然である。
コカ・コーラやペプシとは似ているけれど、少し違った味がした。
しかし、紛れもなくコーラであった。
美味しかったっちゃぁ、美味しかった。
割と好きな味である。
そもそも、私は嫌いな味というものが無い。好き嫌いとか無いのである。
私はコーラをクラフトしたのだ。
幾らかの金銭と、幾らかの時間と引き換えに「コーラをクラフトする」という貴重な体験を獲得したのだ。
今日はいい1日だった。